第三章 旅立ち 当ても無く歩き始めた少年ウィル。 町はだんだん遠ざかっていくが、ウィルにためらいは無かった。 ただ、何をしていいのか分らなかった。 『心を探せ』 ディルの言っていた事が頭を過ぎる。 そんな事すれば・・・俺はどうなる? 「ウィルゥゥゥ!!」 後ろから聞こえてくる聞きなれた少女の声に振り向く。 そこには、大きく手を振って駆け寄って来るフィアがいた。 「フィア」 どうしてココに。フィアが傍に来るまで立ち止って待つウィル。 「ウィル、大丈夫だった?」 少し息を切らせながら、ウィルの目を見て言う。 「別に平気だよ。ただ、出て行けって」 「そんなの酷いよ!!ウィルは何もしてないのに。」 町の人達はこう言っていた。魔物が町を襲ったのはウィルが居るからだと。 「それは、どうかな。フィア、お前は町に戻った方がいい。ギアもおばさん達も心配するだろ?」 止まない雨のせいで二人はびしょ濡れだった。 「イヤ!!そんなのイヤよ。町の人たちはみんな酷い事ばっかり言う。おかしいよ。 ねぇ、ウィル。ウィルの心を探そう?あたし、昔の事よく分からないけど ウィルだけ心がないなんて、おかしい。ウィルに心がないままなのに、魔物は現われるし・・。 封印って、心は関係ないんじゃないの? だって今、魔物が出るならウィルの心は元に戻るはずでしょ?」 感情的になり、大きな声を出す。 だって・・・。悲しすぎるよ。ウィルだって生まれてきた人間なのに・・・。 昔から、忌み嫌われていたウィル。心がないからと言って、悲しいはずだ。 きっとウィルだって、どこかにある心で感じてるはず。辛い、悲しいと・・・。 「お母さんだって、お父さんだって・・・」 「もう、いいよ。雨宿りしよう」 分っていた事だ。誰もみな、自分の事を邪魔だと思っていることを。 「ディルが言っていたんだ、心を探せって」 近くの大きな樹まで、歩き雨宿りをする。そして、その樹に二人で寄りかかり座る。 「え?ディルが?」 「あぁ、死ぬ前に。でも、その心が何所にあるか分らないんだ。それに、俺が心を取り戻したら・・・。」 また、何か酷いことをしてしまうんだ。 記憶がないけど、分るんだ。俺が、心をなくす前に酷い事をしたって事が。 「多分、ウィルの心は封印の城にあるはずだよ。あそこは色んなのがあるから、無かったとしても 何かヒントが見つかるはず」 「でも・・・。」 先のことを考えるとやはり、いけないことだと思ってしまう。 「もう、世界は動き始めてるんだよ?このままじゃぁ、世界はどうなるか分らない。封印を確かめに行くだけでも いいじゃん!!それで、心だけ開放すれば」 「そんな都合のいい事が出来る訳ないだろ・・・」 そうかなぁと、小さく呟きフィアは黙り込む。 小降りになってきた雨。だが、曇りは晴れようとはしなかった。 「おい、フィア。まったく、お前はどれだけ母さん達を心配させれば済むんだ!!」 木陰で休んでいると、また聞きなれた声がする。 少し困ったような顔のギアがそこにいた。 「お兄ちゃん・・・。お兄ちゃんは裏切り者だよ!!あたし、帰らないから!! ウィルと一緒に心を探すんだもん!!」 真っ直ぐ、ギアを見上げ睨み付け言い放つ。 「馬鹿言うなよ。誰がいつ裏切ったんだよ。話をよく聞け」 座っているフィアの前にしゃがみ、同じ目線で話す。 「どうして?お兄ちゃんは、町の人やお父さんやお母さんと一緒じゃない!!」 一緒だよ。みんなウィルを邪魔者扱いして・・・。 「話をよく聞けって言ってるだろ?俺は封印を解くのは反対だけど、心を取り戻しに行くのには賛成だって事」 そんな事、出来るか分んないけどな・・・。 それより、封印を確かめなきゃ・・・ ギアは「まぁ、よろしく」とウィルに笑い掛け、握手を交わす。 「裏切るわけ無いだろ?俺達はずっと一緒だったろ?」 フィアが心配だからなと、ウィンクする。 「お兄ちゃん。」 「ギア」 ギアをジッと見つめる。 「な、なんだよ」 「ありがとう!!」 「ありがとな」 「うるせぇよ、照れんだろ」 顔を赤くして、一緒に木に寄りかかって座る。 ―――― 「きゅぅ」 曇りだが、雨が止むのと共に、空から聞こえてくるレグの声。 「レグゥ」 フィアがレグを見上げ立ち上がり、驚いたような顔で言う。 「レグ、お前どうして」 地上に降りウィルの顔に頭を押し付けるレグ。そんなレグの行動に擽ったそうに 頭を撫で返す。 「よかったぁ。レグ居なくなったから、ちょっと心配だったんだよ」 嬉しそうに答えるフィア。 「きゅぅぅ、きゅぅぅ」 レグはいつもの用に、ウィルに話しかける。 ディルのように、居なくなる・・か・・・。 「俺は居なくなったりなんかしないよ」 「ウィル、レグをつれていくのか?」 ギアはさっきまで腰掛けていた樹から立ち上がった。 「え?」 考えていなかった事を聞かれギアの方を向く。 「これから先、危険とかあるだろうし。龍のレグをつれてくのは・・・。」 不都合だ・・・。フィアだって厄介なのに、龍のレグはどうなる?言う事きかないだろ・・・。 ギアは、レグが無事だった事を二人と同じ気持ちでいた訳ではなかった。 「きゅぅぅ」 離れるのはイヤ ボクは、ウィルと一緒がいい 一人は寂しいよ 「どうしてお兄ちゃん。ちょっとくらい良いじゃん」 「いいよ、フィア。レグ分ってくれ、すぐ帰ってくるから。」 そのウィルの声に納得せざるおえないレグ。寂しそうに「すぐにだよ」と声を出す。 「分った。約束だ、すぐ戻ってくるよ」 レグは、また強く頭をウィルに押し付ける。 ギアはレグに話かける。 「ごめんな、レグ」 すまない事をした。 申し訳なくギアはレグに謝ったが、すぐに歩き始めた。 急がなきゃ間に合わないんだ・・・。 「そんなぁ、レグと旅が出来ると思ったのに・・・。」 帰ってきたら、一緒に遊ぼうねとフィアは先に歩き始めてギアを追う。 「レグ、危ないからお前は祠からあまり離れるなよ。じゃぁ」 最後に強くレグを撫でて二人を追っていく。 「きゅぅぅぅ」 レグ? レグのその言葉に振り向いた。 「どうしたんだ?」 前方から聞こえてくるギアの声。早くと急かすようだった。 「いや、何でもない。」 ウィルは走って二人に追いついた。 レグがなんて言っていたか聞かれたが答えなかった。 レグ、どうして? レグの言っている意味が分らなかった。 「さぁ、出発だぁぁ!!」 フィアの嬉しそうな声が空に響いた。 レグは空に飛び立ち、行ってらっしゃいと声をあげた。 行ってくるよ、レグ。 next