第五章 少年ハイラ 急ぐギアに付いて行き、最上階へと着く。 そこには、大きな部屋へと続く扉があった。明らかにそれは重要なモノがあると言った雰囲気で 鍵が頑丈にかかっている。 だがその鍵は、既に破壊され扉も片方壊れていた。 3人は扉の前で立ち止る。 「ここが・・・。」 ウィルは一歩前に出て、少し見える扉の中を見つめる。 ここに、俺の封印が・・・。 「行くぞ」 ギアは、また急ぐように扉の隙間から部屋の中へと入っていった。 フィアもそれに付いて行く。 ディル・・。俺はここで心を取り戻したらどうなるんだ? ウィルはディルの言葉を思い出し胸に手をあてる。 「こ、これは・・・!!」 中で、ギアの驚いた声がする。 何かあったのか? ウィルは、部屋の中へと走る。 部屋の中は、高い天井の造りになっている。そして、他の部屋と同じで、酷い事になっていた。 砕けた封印のためのクリスタル。そして、それを守るための結界を操る杖までもが折れて転がっている。 「めちゃめちゃだよぉ」 フィアはそこら辺を見歩く。そのたびにガラスの破片を踏む音が部屋に響く。 神を表したステンドグラスが、割れていてその破片が床をキラキラと何色にも光らせる。 「封印のクリスタルが砕けてる・・・」 ギアは中心部にあるクリスタルに触る。 間に合わなかった・・・。もう、封印は解けた。後は時間の問題・・・。 「本当なのお兄ちゃん!?」 その声を聞き中心部のクリスタルへと駆け寄るフィア。 封印が解けている・・・? ウィルは胸に手を当てる。 じゃぁ、なぜ俺に心はない? ウィルは、その場に立ち尽くし動かなかった。 「どうして?ウィルは?ウィルの心は?」 フィアは、ギアに訴えるように言う。 「そんなの俺に聞くなよ!!」 ただでさえ焦っていて、感情が高ぶっているギアはフィアにあたる。 そんなの・・・。 「お、お兄ちゃん?」 こんなお兄ちゃん初めて・・・。 「ご、ごめん・・。良く調べてみる」 ギアは感情をおさえるように、前髪をかきあげ他のところを調べる。 お兄ちゃん、なんか変だよ・・・。 フィアは、ジッと砕けたクリスタルを見つめる。 あれ・・・? フィアは砕けた少し大きめのクリスタルの破片を見つけた。 その中には、小さな黒色のクリスタルが埋め込まれていた。 何コレ?クリスタルの中に、また黒いクリスタルが・・・。 「お兄ちゃん、ちょっと来て」 フィアは部屋を調べていたギアを呼びそのクリスタルを指差した。 「何だコレは・・?取り出してみるか」 ギアは、剣を抜く。 普通の剣では砕けるはずがないが、ギアは魔力を込めて振り下ろした。 そのお陰でクリスタルは砕け、黒いクリスタルが取り出された。 「何かあったのか?」 ウィルは、その砕けた音を聞いてその場に来た。 黒いクリスタル・・・。 「ねぇ、ウィルが近づいたら、コレ光ったよ」 フィアは、その黒いクリスタルを手に持ちウィルの方へ向ける。 すると、不思議なことに黒いクリスタルは光り始める。 「本当だ、コレがもしかしたらウィルの心?」 ギアはそれを見て言う。 これが、砕けなかったからウィルの心は戻らなかったのか。 でも、こんなモノ今さら・・・。 「これが俺の・・?」 心・・・。 ウィルがそれに手をのばすと、更に光の強さが増す。 「おぉっと、封印は解かせないよ!!」 上の方から、少年の声が聞こえる。 そして、それに気づいて上を見たときにはフィアの手から、黒いクリスタルは消えていた。 「あぶないなぁ、こんな物騒なもの。」 宙に浮かぶ12歳くらいの少年は、クリスタルを手に持っていた。 「誰!?」 フィアとギアの声が重なる。 「誰って?そんなの君達に関係あるの? 良かったぁ、こんなのの封印が解けたら冗談じゃないよ」 少年の目は鋭く、3人を見下す。 「それを返して!!」 フィアは、その少年に向かって大声を出す。 折角見つかったウィルの心。取り返さなきゃ!! 「ふははははは!!何で?君には関係ないだろ。なぁ、フィア」 目が血のように赤い少年は、挑発するかのように笑う。 知られていないはずの名を言われ、驚くフィア。 「どうして、あたしの名前を・・。」 「君だけじゃないよ。そこにいる二人も知ってる。ウィルにギアだ。」 引きつった目をギラギラと光らせる。 「お前は誰だ?」 ウィルが口を開く。 何で、俺たちのことを知ってるんだ? 「そんなに知りたいの?俺のこと。馬鹿だねぇ、死んでもらうのに。意味無いんだよね。」 「なんだと!?」 コイツ、何者なんだ? ギアは剣を構える。 「君も物好きだねぇ。まぁいいよ、教えてあげる。これは全部俺がやったんだ。 くだらない世界を面白くする為にね。だけど、こんなモノが存在するなんてね知らなかったよ」 「あぶない、あぶない」と、少年は上からゆっくり降りてくる。 「くだらないだと?」 こんなヤツのせいで、俺は・・・!! こみ上げてくる怒り。魔物が出現したのも、町やディルがあんな事になったのも 全部この少年のせいなのだと思うと剣を握った手が震える。 お兄ちゃん? フィアはそんな隣にいるギアをみて驚く。 本気で取り乱して、怒っている姿など見たことがなかった。 「愚かだな。君も同じだよ?俺と。歪んだ心の持ち主だ。だから、君の気持ち分るよギア。」 ギアの目の前で両足を地上につく。 「俺の何が分る!!クソォォォッ!!」 剣を大きく振り上げる。 コイツに何が・・・。俺の辛さなんか、誰にも!! 「お兄ちゃん!!」 「ギア!」 フィアとウィルの声が響く。 ギアは、そのまま少年に剣を切りつける。 「考えが甘いんだよ」 冷たく言い放ち、右手でギアをはらうかのようにする。 「うわぁぁぁぁ」 ギアは剣が少年に触れる前に、物凄い力で吹き飛ばされる。 コイツ、ホントに子どもなのか・・・? クソッ、なんで・・・こんなヤツに。 ギアは数メートル吹き飛ばされ、壁に勢い良く衝突する。 「お兄ちゃん!!」 お兄ちゃんがこんなに簡単に・・・。凄いこの人。 ギアに駆けよるフィア。 「お前は、何しに!?」 ウィルは、背中に背負った長剣を引き、両手で持ち構えた。 コイツだ、あの異様な気配の正体は・・。 「監視してたんだ。変な事されたら困るからね。こんな物騒なもの良く見つけたよ。」 少年はクリスタルを手に持ち、また宙うへと浮かび始めた。 「ウィル。これは、君が思っている通り、君の心だ。でも、お気の毒だけどこれは返せない。 じゃぁね。」 やっぱり、俺の心。 「待て!!」 ギアは半分起き上がり叫ぶ。 「悪足掻きは嫌いじゃないよ」 少年は、何かを呼ぶかのように指笛を吹く。それは、部屋の中だけではなく外まで響いた。 すると、部屋の壁は何かに激突され破壊される。 そこからは、数十体の翼を持つ魔物達が部屋に入ってくる。 「俺の名前は、ハイラ!!もし、ココで死ななかったら、覚えといてよ。 まぁ、死んだら面白くないからね。精精悪足掻きするんだね!!」 そう言い放つと、少年ハイラはその破壊された壁から外へと出て行った。 「逃げるだと!?」 ギアは、傷を痛みながらも立ち上がりハイラを追おうとする。 「ダメだよ!!囲まれてる!!」 フィアは、行こうとするギアを止めるといつの間にか、周りを囲む魔物達を指差した。 魔物は、不気味なうねりをあげてこちらを睨んでいる。 「うぉぉぉぉ!!」 ギアは、物凄い勢いで魔物達にかかっていく。 なんで、なんで、なんでこんな事に!!俺は・・・。俺は!! 理性がブチッと音を立てて切れたのがギアには分った。 次々と魔物を切り、血が飛び散る。 「ギア」 ウィルは剣をおさめた。 ギアが怒っている・・・。俺は心をまた、取られたと言うのに何も・・・。 フィアとウィルは、魔物には手を出さず 感情のまま魔物達を切っていくギアを見つめた。 魔物の全滅は時間の問題だった。 next